それは突然だった・・・・
いつものように楽しく話しながら帰っているとすぐ先にさっきまで私達の近くの砂浜で遊んでいた幼稚園生くらいの男の子がいた。
そして次の瞬間、男の子が持っていたビーチボールが風に飛ばされてしまった。
男の子はボールを追いかけるのに夢中になった。
次の瞬間、男の子に向かって車が走って来たのだ・・・
「危ない!!!!!!!」
私は無意識のうちに両手で目をふさいでいた。
しばらくしておそるおそるふさいでいた目を開けると男の子は泣いていたものの無事だった。
良かったぁ・・・」
「あれ?優がいない・・・」
「ゆ、ゆ・・・優?」
男の子を守ったために車に衝突し、ずいぶんと先の方まで飛ばされた優は血を流して横たわっていた。

そこから私の記憶は途絶えた・・・・
ただひたすら涙がとまらなかった
朝起きても涙が出ている。
人間ってこんなに泣けるんだね
優はその日の夜搬送された病院先で亡くなった。
あまりに急で思いもよらぬ事故。
私の目の前でかけがえのない命が奪われる
1秒前まで一緒だったよ?
私が死ねば良かったのに・・・
優はずるい・・・
死んだ方が楽だもん。
残された方はこれからずっと優の死を受け止めなきゃいけないんだよ。
由依は相当なショックを受けたのかしばらく学校へも来なくなった。
心配した藍子は由依の家まで見舞いに行った。
ピンポーン
「はい?」
「あの・・高岡ですけど・・・・」
「あぁ〜藍子ちゃん?由依ったら部屋にこもりっぱなしで・・・藍子ちゃんからも何とか言ってあげてくれる?」と由依の母も心配そうに藍子に頼んだ。
「あぁ・・・はい。」と自信なさ気に返事をし、由依の居場所まで足を進ませた。
トントン
「由依?藍子だけど・・・・入るよ?」
「あぁ、藍ちゃん・・・・」
「ごめんね学校行けなくて・・・・」泣いているのか由依の声がいくらか震えている。
「皆心配してるよ。早くおいでよ!」とわざと明るく振舞う藍子。
「私もう一生立ち直れないかもしれない。優がいなくなって朝起きるたびに涙が止まらなくて・・・起きてると考えちゃうから・・・辛いんだ。優はホント最後までずるいよ・・・」下を向いて泣きながら藍子に話す。
「由依・・・由依は変わったよ。辛いのは優を愛していたからだと思う。きっと優だって辛いよ。寂しい気もするけど、考えてても先へは進めないよ。生きてる人間には未来があるんだよ。だから優のぶんも生きよう。由依の中に優は生きてる!」そういい残して藍子は家を後にした。
藍子もあまりに落ち込んだ由依を見てショックだったし、何て声をかけていいか分からなかった。
きっとあの時の藍子は自分が励ましてあげれたのか、力になれたのか、何をいったのか・・・・覚えていないだろう。
あんな由依初めて見てのだから・・・・
それから2週間後
由依が学校へ出てきた。
以前まで恋愛に対しては興味津々、恋バナだって毎日誰かしらと話してる、男好きと言われるほど男子とはフレンドリー。
そんな由依だったけど、あれから一切恋愛はしなくなった。
優が亡くなってから由依は毎日海にいた。
学校を休んだ日もずっと海にいた。
何も考えずボーっと海を見つめてた。
思い出が蘇る。
海の匂いは優の匂い、海の音は優の声、ただ海に行くだけで会える気がした。
そうやって海へ通う毎日が3ヶ月続いた。

季節はすでに秋から冬へ移り変わろうとしていた。
海へ通い続けた由依に思いあたることがひとつだけあった。
海は2人のお気に入りの場所。
しかし今ではいっつも泣いてばかりの悲しい場所に変わってる。
これじゃ〜海も優も悲しいよね?
そう意識し始めてから、少しずつ元の由依に戻り始めた。
月日はあれから2年も経った・・・
由依は大学生。
藍子とは違う大学だが相変わらず無二の友だ。
もう海へは行ってない
藍子の言う通り私の中で優は生きているから
やがて由依は恋をした・・・・
榎木田 慶介という素敵な男性。
優みたいに実は照れ屋さんだけど、とっても優しい人。
私は久しぶりに海へ行った
変わらないあの場所。
「優・・・私には愛するが出来ました。優が私を大切にしてくれたように私も大切にしたい。ありがとう。」
その時、急に風が私の背中を押すように吹いた。
まるで優が風と一緒に私を追いかけ背を押したようだ。
今でも優は私の心の中で生き続け微笑んでいる。
そして私の元にはかけがえのないもう一人の優がいる・・・
「優、起きなさい〜!着替はできた・・・・?早くしないと幼稚園に遅刻しちゃうわよ。」
END
 
☆戻る☆