エピローグ
一ヵ月後…。
 
六月八日午後六時三十二分。
 
僕の名前は、坂下涼二。
不思議なことに、僕には記憶が全く無い日が何日か存在します。
家族に聞いても、どこかに出かけてたぐらいの情報しか手に入りません。
僕は、どうしたんだろう?不思議なことといえば、他にもいくつかあります。
学校では、屋上に行くときに何となく恐いような気がするし、「アイドル」なんて言われてる男子に話し掛けそうになったり。
普通に街を歩いていても、ある特定の男女二人組を見ると、懐かしいような感じがするんです。
…逢った事も無いハズなのに。
もう一つだけあります。
…この路地です。
ものすごく気になるけど、どうしてだろう?
この先に、何があるのかなんて知らないハズなのに。
無償に行きたくて、何故かわからないけど涙か出る。
自然と向かう足に従い、今日は路地に入ってみます。
…ここは、なんだ?
「…シップウ?」
すごく懐かしい。
なんでだろ?
僕はここで飲んだカフェオレの味を知っている。
この中で待っている、優しい笑顔を知っている。
突如扉が開き、中から一人の男が出てきた。
ドアプレートをひっくり返し、中へ戻ろうとする。
「…あれ?どうしました?」
「あっいえ!なんでもないです!」
…あっ、あれ??何で涙が出てくるの?わけわかんないよ、僕っ!
「どうぞ?カフェオレでもいかかですか?」
「え?!あっ、えっと…、はい」
言われるがまま、店の中に入る。
店内には、キレイな女の人と、
学校での自称アイドルの高橋潤平、
よく街で見かける男女二人組、
そして、
ぽつりと落とすような笑顔を見せる女の子がいた。
「…あ」
「どうしました?」
「あっ、いいえ」
僕は、何故だからわからないけど嬉しかった。
彼らに会えて、すごく嬉しい。
どうしてだろう?
なんで笑顔がこぼれるのだろう?
「…ただいま、みんな」
僕がこんなことを言うのも。
「お帰り、涼二」
彼らが口をそろえてそう言うのも。
きっと理由がわかる日は、いつまでたっても来ないだろう。
だけど、友達になることはできるんだ。
 
ここに集まって、みんなで笑うことが、できるんだ…

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