「ハロウィーンパーティ」
今日は楽しいハロウィーンパーティ
子供達がお化けになって楽しむ日であるが、この町ではもう一つ
年に一度、魔女が子供達にプレゼントを配る日
「ママー、今日は私が初めて配る日ね」
今年で11歳の誕生日を迎える泪(るい)は、真新しい自分の箒を見ながら言った
「そうよ。だから今日は早く学校から帰ってきて、お昼ねするのよ。じゃないと夜、箒から落ちちゃうかもしれないわよ」
彼女の母親は悪戯っぽく微笑む
そう、今年は、泪が初めて子供達にプレゼントを配る日
泪はこれを、指折りして楽しみにしていた
「ママ、みんな、喜んでくれるかな」
「もちろん。それより、早く学校へ行きなさい」
「はぁーい」
「オハヨウ〜♪」
学校に来ると、ハロウィーンでの噂で持ちきりだった
「あたし、自転車が欲しいわ」
「俺は、新しい帽子が欲しい」
「ところで、今年は誰がプレゼントを配るのかな」
などなど。
言い忘れていたが、プレゼントを誰が配るかは秘密である
これは魔女の掟の一つである
ついでに、自分が魔女であることもバラしてはいけない
「あ、泪ちゃん、おはよぉ」
「おはよ、イチゴちゃん」
「ねぇ、泪ちゃんは、今年何欲しいのぉ?」
「えーと…」
泪は返答に困ってしまった
大好きなイチゴちゃんにだけは言ってしまおうか
でも、掟を破ってしまったらお母さんにこっ酷く怒られる
「うーんと…」
ちょうどその時
バーン!!!
と、教室のドアが開いた
そこから出てきたのは、クラス一悪ガキの孝治
「おー!?なんだオメェら!!まだハロウィーンなんて信じてんのかよ!11歳にもなって!!ガキだな!」
11歳は立派な子供のような気もするが、これは気にしないでおこう
「何よ!!信じたっていいじゃない!」
「あー?泪、お前まだガキだなぁー!」
「ガキだもん!まだ11歳だもん!」
「もう11歳なんだよ!」
二人は互いにつかみ合うと、火花を散らし始めたその時
「ストップ!やめなよ!!二人とも!」
イチゴがとめに入った
二人はそっぽを向いて
「「ふーんだ!」」
と言った
イチゴはそんな二人を見てため息をついた
「もぉ〜、折角楽しい気分になってたのにさぁ。大体、孝治君、そんなこといってるとプレゼントもらえないよぉ?」
これには一瞬孝治もひるんだが
「へん!!別にいらねぇやい!もらえなくて初めて大人なんだよ!」
と言った
この言葉に、クラスはざわつきだした
「ねぇ、プレゼントもらえないと大人なの?」
「じゃぁ、俺、もういらないかも」
「あたしもぉ、早く大人になりたいもんー」
口々にそんなことを言い出したので、泪はショックを受けた
「そんなぁ〜、誰もプレゼントをもらいたがる人がいなかったらどうしよぉ…」
そして夜、泪は強く箒の枝を握り、地面を蹴って空へ旅立った
昼寝はできなかった
不安だったから
でも、今更やめることはできない
「はぁ…、最初は、ピンクの屋根のお家…」
泪は飛び回った
「あ、あった!」
鍵が開いていたので、窓から入ると、イチゴが眠っていた
「イチゴちゃんのお家だったのか!あ!ちゃんと欲しいものが紙に書いてある!!えっと…リ○ちゃん人形か」
泪は魔法で人形をだすと、ベッドの枕もとに置き、空へ飛んだ
「え〜と、次は…、この家だ」
またしても鍵が開いていたので窓から入ると、男の子が寝ていた
「うんうん、プラモデルね」
泪は魔法でプラモデルをだすと、枕もとにおき、再び空へ飛んでいった
そうしていくうちに、ほとんどの家へ飛び回った
誰もプレゼントを望んではいない家はなかった
そして、最後の家に着いた
そこで眠っていたのは…
「あ、孝治君…」
すやすやと眠っている孝治がいた
枕もとには紙が置いてある
「なーんだ、結局欲しいんじゃんか。でも、あんたなんかにあげないよーだ!!」
泪は箒にまたがり、飛び立とうとした
しかし…
「…でも、かわいそうかなぁ…」
泪はしばらく悩んでいたが、急に明るい顔をすると、魔法で孝治の欲しい物をだし、枕もとに置いた
「魔女は誰にでも平等なんだから。別に、許した訳じゃないよ」
眠っている孝治に語りかけた
それでも、泪はなにかモヤモヤが取れた顔をしていた
そして、強く地面をけり、勢いよく窓から飛び出した
「わぁ!月が綺麗〜」